昨日のブログで『便所の神様』ってタイトルにつけたけど、あれ、『トイレの神様』の誤りでした。この歌を好きな方、ごめんなさい。紅白歌合戦で見て涙を流す程感動したにもかかわらず、曲名を間違えておぼえていて、恥ずかしいです。
まあ、人間誰しも間違いは有るから、勘弁してください。
それで、昨日Gibsonのギターについて書いた次の日Martinのギターについて語るなんて、節操が無いようで恥ずかしいのですが、今日はMartinです。Martinのギターの歴史とか、それぞれのモデルの説明とかは、インターネット上にゴロゴロしているので、私は、自分とマーティンのギターとの間に起こった出来事あれこれについて書きたいと思います。お時間許せば、お付き合いください。
昨日も少し書きましたが、私はギターが好きは好きなのですが、その中でも特にアーチドトップのジャズギターを偏愛するところがあります。それで、自分が持っているギターの中で一番のお気に入りはChakiという京都にあるギターメーカーの作った安物(とは言っても、10万以上するんだけど)のピックギターなのですが、音だけに限って言えば、ピックギターの音よりももっと好きな音は有ります。じゃあ、どんな音が好きかというと、マーティンのドレッドノートの所謂「ドンシャリ」と言われるサウンドです。
ピックギターは個体によっては2弦だけ音量が小さいとか、低音弦の音が詰まって聞こえたり、ある程度そのギターの癖と付き合いながら鳴らしていく面白さは有りますが、「かき鳴らして楽しいか」と言う面から考えると、好みの個人差はあるとは思いますが、マーティンのドレッドノートに軍配があがります。ピックギターはしばらく弾いていないとすぐその癖を忘れちゃって、鳴らすツボがわからなくなってしまいますが、マーティンのドレッドノートはいつでも弾き手を裏切らないですね。いつでも思いっきり大きな音で鳴ってくれます。
そんなマーティンのドレッドノートと私の出会いは、もう今から十年以上前まで遡ります。
私が二十歳の頃、大学に入学して、彼女ができて、一年生の夏休みに彼女に会いに彼女の実家を訪ねました。彼女の実家はこれまた九州の熊本にあったもんで、そこまで行くのだけで結構疲れてしまいましたが、その上彼女の両親に挨拶しなきゃならなかったので、心労と体験したこともないような熱さのせいで倒れそうになりました。
それで、なんとか彼女の両親に挨拶にならないような挨拶をして、家にとおしてもらい、一緒にカレーライスの昼食を食べました。昼食が終わった後、彼女のお父さんはおもむろにどっかからギターを持ち出してきて歌を披露してくれました。その歌が、すべて彼女のお父さんの書いた曲で、ギターの腕前もかなりのものだったので、ギターが好きな私とお父さんはお互いにすぐに打解けることができました。
それでその後、2階の彼女の部屋に通してもらったとき、その部屋に一台のマーティンのドレッドノートが置いてありました。詳しいモデル名とかは覚えておりませんが、スプルーストップ、マホガニーサイド・バック、ローズ指板にスノーフレークインレイの美しいギターでした。
おそるおそるそのギターを手に取ってみて、親指で柔らかく低音弦から高音弦へGコードを鳴らしたとき、思わず自分の耳を疑ってしまいました。いや、耳を疑うっていうとなんだかネガティブな意味になってしまうけれど、その音が、自分の弾いたギターの音だとはすぐには呑み込めませんでした。
「シャリン」という響きとともに、音が膨らんでゆく感じ。そのとき初めてマーティンのギターに触ったのですが、「ああ、これが良いギターの音なんだ」と、「ああ、マーティンのギターってこんな良い音するんだ」と。「彼女の父さんはこんな良いギター持ってるんだ」と私の知らなかった彼女の、いや、彼女のお父さんの一面を垣間みた気がしました。
東京に帰ってからも、熊本の彼女の実家での「初体験」が忘れられずに毎日のようにギター屋を見て回りました。ギター屋を見て回ることに私の大学一年生の夏休みは費やされたと言っても過言では有りません。毎日マーティンのギターを見つめて、ため息をもらしました。「社会人になって、自分で金を稼げるようになったら必ずMartinのギターを手に入れよう」、「彼女のお父さんのやつみたいに、シャリンと鳴るやつを手に入れよう」と心の決めました。
それから、長く暗い学生時代が5年あまり続くんだけれど、その辺は省略して。大学を6年かかってなんとか卒業した私は、あるメーカーの子会社の船会社に就職しました。
4月に就職して、初月給が出て、5月の連休がきたら、私はすぐにお茶の水に行きました。そして、何台かあった自分の手の届くマーティンのドレッドノートのうち、一番気に入ったD−28をローンで購入しました。
早速持って帰って、自分の部屋でD−28をやさしく鳴らしたとき、「シャリン」と瑞々しい響きがしました。「彼女のお父さんのギターの音だ」と、嬉しくなりました。
それからもう5年近く経つのですが、D−28を弾くたびに、彼女の実家での「初体験」を思い出します。それで、その時の彼女、今は私の妻となって、私の横で寝息をたててます。
いつか、熊本に自分のD−28を持って行って、お父さんと二人でマーティンを弾きたいと思っております。
シャリンと鳴らすならこの弦です。
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