腐ってしまったスピグラと、洒落者WeegeeのNaked City

腐って駄目になったスピグラ
腐って駄目になったスピグラ

昨日のブログでも書いたのだけれども、Weegeeについて書こうと思い立ち、長らく使わずに押し入れにしまってあったスピグラを取り出したら、カビみたいな腐食みたいな白いのに覆われて、ベタベタしていた。

とっても気持ち悪かった。もうスピグラなんて見たくないと思わせるのに充分な程ショッキングな姿だった。

 

明日ぞうきんでよくふいておこう。酢酸でもつけてふいたらきれいになるという噂もあるのでそれもやってみよう。できればカナダワシでこすって白く腐食したところをきれいにして、ピカールでピカピカにして、錆び止めでも吹いておこう。

 

昨今のカメラは電子機器だが、ちょっと前までカメラと言えば精密機器の代表格だった。

私の手元にあるカメラの多くも精密機器で、その機械的な仕組みは頭で考えただけじゃどうなっているのかさっぱり分からない。けれども、スピグラみたいなシノゴの古いカメラは、作りが大雑把で、精密機器ではない。こういうカメラはカナダワシでゴシゴシ洗うのに向いている。

 

ニコンにカビが生えてもカナダワシで洗おうとまでは思わないが、スピグラはカナダワシがとっても良く似合っている。万能カメラでありながら、大味で大雑把で、あたしみたいな人間にちょうどいいカメラである。

 

スピグラというカメラが好きなのにはもう一つ理由がある。私の大好きな写真家Weegeeがこのカメラを愛用していたからである。スピグラといったらウィージー、ウィージーといったらスピグラである。ウィージーの写真は一生懸命見たことがないが、なかなか良い写真を撮る。見たいものに忠実で、それらがよく見えるように撮影されていて、見ていて清々しい。

フレーミングも不器用な程シンプルで、写真に難解さがない。ゴシップ、暴力、セレブ、貧困、殺し、セックス、何でも撮っている。写真を撮りたいという欲求に素直な写真群だ。

 

写真もなかなか良いが、Weegeeはスピグラの似合う男であるというところに惹かれる。中折れ帽、葉巻、スピグラで武装して、まるで映画に出てくるカメラマンのようだ。Weegeeは写真家であり役者だ。写真も、見たいものが写っていることが最優先なので、プリントをきれいに見せようとか、そういう余計なことに労力を費やしていないことにも好感が持てる。写真集もざら紙で、印刷の質が悪くて、新聞よりもヘボくて好感が持てる。そういう、細かいことまで徹底されていて、やっぱり役者だと思う。

 

フラッシュ一発で、見たいところをくっきり写し出す。そういう写真の清々しいあり方を、Weegeeは貫いた。素晴らしい写真家である。日本にも倉田精二さんというWeegeeがいる。写真集見つけたら是非見てみてください。印刷がヘボい、良い写真集作ってますから。

 

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コメント: 1
  • #1

    and_tkt (金曜日, 18 2月 2011 22:51)

    一昨年くらいにウィージーの自伝を読んだのですが、お金の話ばかりでとても楽しかったです。
    お金が欲しい、だから写真を撮る、という感覚って、撮影技術がプロだけの世界だったからこそなのでしょうが、シンプルで素敵です。
    僕の好きなアラーキーも、お金に貪欲だからこそ、あれだけ精力が続くのではないかと思います。

    ウィージーはニューヨークがお上品になっていくのに嫌気がさしてハリウッドで映画の撮影技師として移住したらしいのですが、それは同時にニューヨークがスピグラからライカの時代に向かって行ったのと重なるのではないかと思います。
    身体で撮る時代から、指先で撮る時代へ。
    男の世界から、性別のない世界へ。