バイクに股がることの価値。ジュリアに今更傷心。

べつにバイクに乗ってなくたって人生みんな一緒で、いつでも雨具の用意があるわけではない。雨だったらまだましだけれど、人間生きていたら自分でも気づかないうちに泥沼にハマってしまうことがある。

好き好んでバイクに乗る奴らがいることからもわかる通り、まともな人間の殆どは好き好んでトラブルがありそうな道を選ぶ、時に意識的に、大半は無意識で選ぶ。

そんなことはわかっているし、自分も最近バイク乗りの仲間入りをしたんだから自分もそのまともな人間の一人に数えても良いのかもしれないけれど、私はまだ能天気な方だ。あんまりヤバいことに手を出したりしない。

昨日、久しぶりに会ったねえさんは、自分の身体を傷つけることで心のバランスをとっているんじゃないかと思う程、ややこしい道を選んで歩いていた。私には、説教をする筋合いもないから、何にもいわないようにしていたけれど、それでも、話を聞いていたら心が重くなった。冗談で言ったのかもしれないけれど、確かに心中しちまったら面倒なこと全部無くなるし、腐った連中への当てつけにもなるかもしれない。私は来週末もバイクに乗りたいし、写真をもっととりたいし、まだまだ聴きたい音楽もあるので死ぬわけにはいかないけれど、ねえさんが一人で自殺するのが嫌だっていうなら、一緒に死んでも良いってやつを探してやろうかとも思った。

そんなことを、今日の昼休みボーッと考えていた。

天気もよかったので、ちょっとバイクに乗りたくなった。

スポーツをしない私にとって、バイクに乗ることは唯一の身体感覚を研ぎすませる行為だ。スナップを撮ってても、視覚と人差し指の感覚だけは研ぎすまされるけれど、バイクに乗っているとほんとに「あー、生きてるんだな」って思うことができる。そんな感覚をねえさんにも持って欲しいと思った。自分を傷つけることなんてしばらく忘れて。

長い間、私は写真や音楽に興味を持って、それらを表現手段にして何かを制作して発表したいと思ってきた。特に写真は、人一倍撮影するようにしているし、常にポートフォリオを作ることを意識してきた。まだ、どんな形にも纏まっていないけれど、表現をすることで自分が生きている証にできたら嬉しいと思っていた。

けれども、写真を撮らなからって死ぬわけじゃないし、ギターがなくても死にはしない。ただ、ものすごく退屈になるだけだ。バイクに乗るようになってわかったことは、自分は必ずしも表現手段を求めていたわけではないこと。むしろ生きている実感を持てる何ものかを常に探していたことに気がついた。それが、写真や音楽なんだけど、それだけが人生っていうわけでもない。まあ、そう切羽詰まるな、ってことをバイクは教えてくれたような気がする。そんなキザなこといえる程バイクに乗ってるわけじゃないけど。

今夜は疲れちまったので、答えなんて全部先送りにして横になりたい。私は自分以外の人間の心配ができる程器用な人間ではない。自分のこともろくに面倒見れない程不器用にはなりたくないけれども、まあその程度が関の山だ。

そんなことを会社帰りの地下鉄で考えていたら、チェッカーズの歌を思い出した。チャッカーズあんまり聴いたことないし、好きでもないけれど、ジュリアに傷心のメロディーがなんとなく思い出された。

汚れっちまった悲しみに、今日も小雪の降り積る。

おやすみなさい。