昨日に引き続いて今夜も音楽の話。
本当は、もっとマニアックな音楽の話書いた方が読みごたえがあっていいのかもしれないけれど、マニアックな音楽の話し始めると結局カントリーミュージックの話に終始してしまいそうなので、今夜はジャズの話。
昨日の晩チェットベーカーの音楽を聴きながらブログを書いていたら、今夜も聴きたくなってしまい。今夜もチェトベーカーのCDをかけながら、このブログを書いています。
チェットの音楽は暗くて、曇っていて、憂鬱で、悲しくて、冷たくて、それでいて聴いているうちに心が和む不思議な音楽です。特に今夜聴いている『Broken wing』は暗い。暗くて儚い。
若くて、バリバリとトランペットを吹いていた頃のチェットも嫌いじゃないけれど、歳とって(とは言っても50代で亡くなっているんだけれど)萎れてしまってからの音楽が素晴らしい。
若くして総入歯で、薬のせいでヨボヨボになったチェットがミュージックシーンに復活したことは、音楽の歴史上、キリストの復活くらいの重要な意味がある(言いすぎか)。この世の中に美しい音楽を残すためだけに、チェットは唄いトランペットを吹いていたのだろう。駄作も多く、歌もオカマ声でちょっと気持ち悪いし、トランペットの腕さえ若い頃と比べると衰えている。けれども、それらが時として完璧にまで美しく交わり、美しい音楽ができる。こんなことならもっと若いうちに総入歯にして、ぼろぼろになっていた方が良いのではないかと思える程素晴らしい時がある。
チェットが生きていた時代をリアルタイムで知らない私は、チェットがカムバックした時、どれほどのインパクトがあったのかは知らない。けれど、若い頃のクールでハンサムだったチェットを知っているファンは、ぼろぼろになったチェットを見てどう思ったかはちょっと想像できる。けれども音楽の神様は彼を見捨てていなかった。精力的にどんどんレコードを発表し続けるチェットが、空振り三振を繰り返しながら、何ゲームかに一度逆転満塁ホームランを放つ姿をリアルタイムで感じたかった。
チェットのフレーズはハードバップの文脈に則ったものであり、めまぐるしく変わるミュージックシーンの中で特に新しい音楽を作り続けていたわけではない。けれども、あたらしい音楽でなくても素晴らしいし、テクニカルにパーフェクトでなくても最高の音楽を発表し続けることができるということをチェットは証明している。
誤解されるといけませんが、歳とってからのチェットのトランペットが下手だって言っているわけではないですよ。凄く上手いです。けれど、若い頃の方が「上手いな」と思わせるプレイスタイルだったってことです。
それで、何の話だったっけ。ああ、I fall in love too easilyですね。この世の中に愛せるものってそんなに沢山ありません。絶対数は多くても、それらに出会う確率はおそろしく低い。だから、I fall in love too easilyで良いのです。愛せるものを見つけてから、裏切られたりして何度も傷つけば良いのです。アメリカが太平洋戦争で勝ったのも「下手な鉄砲も数撃ちゃあたる」のおかげだったのですから。チェットみたいな天才でも、数の勝負を続けていたのですから。
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