Freddie Hubbardというトランぺッターをご存知だろうか。ジャズを聴く方ならたいてい彼の名前ぐらいはきいたことがあると思います。60年代70年代のジャズを好きな方なら、おそらく手元にフレディーがトランペットで参加しているアルバムの一枚や二枚はあるでしょう。
私が社会人になって、ジャズからずっと離れていた間に、フレディーハバードは亡くなってしまってました。一度で良いから生でフレディーの演奏を聴きたかった。彼の刻む八分音符や16分音符は神業とも言えるくらいカッコいい。そのフレディーのトランペットがもう聴けなくなってしまうなんて。
フレディーハバードはハービーハンコックなんかと一緒にマイルスデイヴィスが60年代に築いたジャズのスタイルをより自由に、よりエキサイティングに、且つ、ジャズというフォーマットの中で展開するという文脈において語られるのかもしれないが、彼の魅力はその果敢さと熱さです。
レッドクレイという曲を先日の森田珠美さんの出演するライブで聴いて、「ああ、フレディー!」と心の中で叫びました。レッドクレイをプレイするフレディーハバードの姿は、彼の音楽のあり方を象徴する形でしょう。森田さんのいたバンドの演奏も熱くて良かったけれど、フレディーの曲はタイトなリズムセクションが、ちょっと固すぎなんじゃないかっていうビートを刻んで、その上に管楽器がヘロヘロと乗っかるという姿が一番かっこ良くきまると思います。森田さん達はちょっとロックっぽくなりすぎてたかな。
それで、レッドクレイ今夜聴いてみました。
まず、この曲、イントロを吹くだけで相当体力使いそうなイントロなのですが、フレディーハバードは目一杯吹きまくります。その手抜きのなさが好感持てます。
そして何より、彼のヒットするハイノートはカッコいい。
フレディーハバードは所謂ハイノートヒッターとはちょっと違います。彼は、常に果敢にハイノートに挑む戦士なのです。フレディーは目一杯高い音をヒットしにかかります。「フレディー、そんなに無理しちゃ駄目だよ、唇おかしくなっちゃうよ」「そんなに高い音出せないよ」って聴衆に思わせながらも、常に果敢にその壁を越えてきます。もう出ないだろ、これ以上のハイノートはヒットできないだろ、って聴衆に思わせながらも、常にその上をヒットしにきます。そのせいかどうかわかりませんが、晩年のフレディーは唇を故障してしまいます。一説に寄ると、ディジーガレスピーのトリビュートコンサートでハイノートをヒットしすぎたせいらしいです。
そういうフレディーハバードの姿をみて、学生の頃はフレディーみたいなトランぺッターに憧れました。あの8分音符や16分音符を吹けたらどんなにカッコいいだろう。あ、そうそう、ビリージョエルのザンジバルっていう曲のトランペットソロはフレディーハバードです。彼のトレードマークの16分音符の応酬です。
そんな、フレディーがジャズライフかなんかのインタビューで、インタビュアーがマイルスやチャーリーパーカーを引き合いに出してフレディーの功績をたたえようとしたところ、そういうジャイアンツと並べられることに困惑したように「私はただ、誰よりもラウドにプレイしたいと思ってるだけです」って答えてました。フレディー、なんてカッコいいトランぺッターなんだあなたは。
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