Gretsch Hot RodにTV JonesのMagna Tron

ゴロンとした低音、コリコリしたミドル、チャリンと鳴る高音。特に６０年代以前の個体はこういう音がするのが多い。もちろん、アンプにもよるけれど、音は太く、悪く言えばフェンダーのような使いやすいシャリシャリした音ではないし、ギブソンほど太くもない。クランチで使う分にはグレッチにしか出せないサウンドを味わえるが、今日のハイゲインアンプにあうような音色ではない。

だから、リードギターでグレッチが使われる時は、フェンダー、ギブソンのような音が期待されていないときに限る。

ヴィンテージのグレッチはどうも造りが雑で、たまにいじっている分には楽しいのであるが、ライブでガンガン使えるのかについては、少し不安がある。大体、ネックの仕込みがテキトウすぎて、ギターが安定しない。

その点、近年の日本製のものは良くできている。ネックも程よく細く、これはこれで弾きやすい。

問題は音。近年の日本製のについているフィルタートロンの音は評判が良くない。曰く、ブライアンセッツアーはTV Jonesに交換しているとか、音抜けが悪いとか、音の輪郭がぼやけているとか。

たしかにその通りなのだから仕方ないのだが。そういう私も、自分のHot RodのピックアップをTVに交換した。マグナトロンである。ダイナソニックっぽい音が出る、という売り文句に惹かれた。

私は、ピックアップは断然DeArmond贔屓なのである。５０年代のクリッパーを持っているのだが、これについているDynasonicが素晴らしい。固過ぎもなく、トレブリー過ぎなく、かつブライトで音抜けが抜群。クリーン、クランチで使うならこれ以上のピックアップを私は知らない。ダイナソニックは間違えなくDeArmondの最高傑作だ。

それで、以前ホっトロッドのフロントピックアップをDeArmondの安物に交換したのだが、これがまた素晴らしい音がする。エレクトロマチックについているピックアップなのだが、現行で手に入るデャアルモンドでは一番良いかもしれない。

このたびリアピックアップも上記の通り、マグナトロンに交換したのだが、これがまた、結構悪くない。ちょっとトレブリーなので、アンプでトレブルを絞らなければならないが、フェンダーアンプなんかで鳴らすとおそらくものすごく良い音がしそう。

でも、ガンガンに歪ませるのには向いてないですが、念のため。

それで、もともと付いてたフィルタートロンが二つ要らなくなった。そのうちヤフオクで売っぱらおうかとも思っているのだけれど。

じゃあ、Gretschのフィルタートロンはそんなに駄目なのか、と聞かれると、そんなことありません。クセがあり、使いこなすのは難しいですが、ちゃんとしたアンプさえあれば、他のピックアップでは出せない音色が出せます。そのへんTV Jonesは平凡なピックアップです。TVはモダンで使いやすいのが良いのであって、Gretsch独特のクセというか毒というかが抜けてしまっています。

グレッチのオリジナルのフィルタートロンの音がどんな音がするか、聞きたい方は、イーグルスのHell Freezes Overを聞いてみて下さい。あのアルバムのライブでランディーマイズナーとグレンフライが弾いているエレキはGretschの音です。低音がゴロンとしてて、聴いたこともないようなエレキのクリーントーンです。あのサウンドはTVでは出せないかもしれません。

先日神田商会のショールームで新しいGretschを試奏したのですが、フィルタートロン、良い音してました。TVと比べさせてもらったけれど、グレッチのフィルタートロンはやっぱりあのイーグルスの音がしてました。

でも、やっぱり弾いてて音抜けが気持ちよかったTVに交換してしまいましたが。

フィルタートロンを侮らない方が良いです。良い音でますよ、使い方とアンプ次第です。