彼女から電話がかかって来たのは夜の1時過ぎだった。その夜は、ちょうど、今の私の嫁さん(当時の彼女)が東京にテストかなにかを受けにきたついでにうちに泊まって居たので、布団を抜け出して、台所の換気扇を回し、エコーに火をつけてから彼女の電話にでた。
電話口で彼女は泣いているようだった。
彼女は、今ちょうど彼氏が部屋に泊まりに来ているはずだった。今朝、布団を出た時、私のタバコの臭いが彼女の布団にのこらないように、ファブリーズを吹いたのだ。
どうしたの?こんな遅くに、彼、一緒にいるんだよね?
彼女は何も答えず泣いているようだ。
そっちへいこうか?
まあ、彼女は絶対来いとは言わないだろう。
どうしたの?なにかイヤなことあったの?
あのさ、俺、今まで彼女と寝てたんだよ。こんな時間に電話かけて来て、俺に泣きつかれてもどうすりゃいいのかね?君、そういうことのために、今、彼氏来てるんでしょ?
もう、いい!佐々木さんに電話なんてしなけりゃよかった。あんた、何にも私のこと考えて無いのね!
そう彼女がまくし立てると、永遠にも思える沈黙になり、私も何にも言えなかった。
今の嫁さんが布団から出て来て、どうしたの?と私に聞く。
いや、何でもない。ちょっと友達が泣いて電話かけて来てるから、先に寝てて。
再び、携帯を手に取り耳にあてた。
ごめん、ありがと。
彼女がそうつぶやいた。このまま電話を切ってしまったら、もう二度と彼女と会えないかもしれないと思った。それでも、私は言うべきセリフを探せないまま、電話を耳にあてていた。
五分程、そうしていたが、私の方から話しかけてみた。
きっと、君の夏休みももうすぐ終わるんだね。夏休みが終わったらまた君に会いたい。そしたらいっぱい楽しいことあるよ。わかんないけど。だから、今日は彼氏心配するから。もう寝なよ。彼氏がいなくなった後のことは、俺がなんとかするからさ。わかんないけど。
彼女が小さく頷く音が聞こえた。そうして電話が切れた。
わー、しまったなー、俺一世一代の漢気を見せるべきタイミングでしくじったかもしれない。もっと彼女の声に耳を傾ければ良かったかもしれない。
それから、そろそろ8年が経過するが、私はあのときどう彼女に言えば良かったか、まだわからないでいる。
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早漏 (金曜日, 08 5月 2015 01:59)
「どうしてほしいのか俺に言って? その通りにするよ」
媚薬 (火曜日, 12 5月 2015 03:43)
「今度こそ俺のものになっちまえよ、離さないから」
チンポを大きくしたい (火曜日, 12 5月 2015 16:43)
「子猫め。君が欲しい……」