Martin CommitteeとLeblanc Martin T3460 

マイルスデイヴィスが好きな方は特にでしょうけれど、Jazzのトランぺッター又はトランペット愛好家の多くは、一度はこの楽器を使ってみようかと検討されたことはあるかと思います。マーティン、いやマーチンと一般には呼ばれてますが、マーチンのコミッティーモデル。世界で最もジャズジャズしいトランペット。あのマイルスも、リーモーガンも、ケニードーハムも、アートファーマーも、もちろんあのチェットだって愛用したモデルのトランペットです。

クラークテリーだって晩年はルブランが再生産したモデルの色物を使ってました。かつてはハードバップといったら皆、猫も杓子もこのCommitteeモデルを愛用してたんです。


今日は、そのコミッティーについて。

そもそもこのコミッティーモデル、有名な楽器の割に書かれている文献が少ない。特にWeb上には大した情報はありません。

 

私は、今まで3台のCommitteeを使いましたが、3台が全て全然違う楽器でした。けれども、そんな事、どこ探しても書いていない。だから、今日は書きます。好きかって書きます。ラッパヘタクソなコミッティーバカの紹介するコミッティーモデルです。

 

まず1台目に手に入れたコミッティーモデルはLeblancの再生産モデル。90年代に生産された黒ラッカーのモノでした。このモデルの特徴は、チューニングスライドがリバース管であるのはコミッティーだからもちろんですが、ベルはヴィンテージのコミッティーのようななだらかなテーパーではなく、ヤマハやBachのような急に広がるタイプ。そして何より、やたらとピストンストロークが長いのが特徴です。エンスーモデルのはずなのに、3番スライドにアジャスターがついたリングがついている。この辺はおそらくヴィンテージのコミッティーから受けついたのかと思っていました。

 

二つ目に手にしたのは46年製のCommittee。これを手に入れたとき一番びっくりしたのは、復刻版と思ったよりも違った楽器だったことです。まずはその重さ。ヴィンテージのコミッティーは凄く華奢な楽器です。かなり軽い。そして、クルークの下側の管が本体につながる位置が全然違います。そして、ピストンストロークは私の黒ラッカーのモノに比べるとそれほど長くはありません。ピストンからベルに向かって曲がる箇所の曲がり方も黒ラッカーのモデルは丸いのに対し、ヴィンテージは少し角張ってます。ベルは、40年代までの楽器によく見られるような緩やかなテーパーになってます。だから、黒ラッカーの楽器に使っていたミュートが使えないぐらい奥まで太いベル。

 

3台目に手にしたのは2005年製の赤のラッカーのMartin Committee。これは上の二つとは全く違う楽器です。

まず、ピストンのケージングが黒の復刻版とヴィンテージはよく似ていたのですが、こちらの2005年製は完全にホルトンのケージングです。リードパイプとチューニングスライドの接合部も上の二つはよく似ておりましたが、この赤いやつは接合部を短く、マウスパイプを長くとってあります。だから指掛けのフックはマウスパイプに直接蝋付けされております。

ピストンストロークは短め(Bachと同じくらい)。ベルのシェイプはヴィンテージと同様の緩やかなテーパー。


この楽器を手にしたとき、納得致しました。

Leblancはヴィンテージマーチンの復刻をつくりたいわけではない。マイルスの歴代使用モデルの復刻をしているのだ。と言うことです。


まず90年代の黒のラッカーだったモデルは60年代アコースティックからエレクトリックに移行するあたりの時代マイルスが使っていたブラックラッカーのモデルにそっくりです。チューニングスライドの本体との接合部分、ピストンストローク、3番管のリングの金具のつき方、それがアジャスタブルである点。すべてマイルス使用モデルのドンズバです。ベルのカーブが丸マナあたりもそっくりです。


2005年製の赤ラッカーのモデルは、これは80年代マイルスが復活してから使っていた黒ラッカーのモデルや赤ラッカーのモデルにそっくりです。もっとも、その時代のマイルスが使っていたコミッティーはホルトンがつくっていたでしょうから、まさにそれと同じしようにしているんでしょう。


しかし、まあ、この2000年代に入ってから造られたコミッティーの復刻版、いやマイルスデイビスモデルについては、全然記録が残っていないのです。誰か詳しい方に教えて頂きたいです。


最後に、音についてですが。

私が吹いている分にはどのモデルも息を強くベルにあてるように入れれば明るい音が出て、太くサブノート気味に入れるとダークな音になる使いやすいラッパです。

あえて言えば、ヴィンテージのコミッティーは音をベンドさせやすいので、逆に言うと音程をとるのは難しいです。どちらかというと、90年代製の黒ラッカーの楽器が一番息を入れやすく、音のあたりどころが明確で、モダンな楽器でした。ただ、ピストンストロークが長いのは、人によって好みはあると思います。日本人の平均的な手の大きさにはちょっと長過ぎる感があります。マイルスがオンマイクでとっているマーチンの音はいつもコシがあり、細い中にもシンがありますが、ああいう音を鳴らしたいのなら、バックやヤマハよりも近道かもしれません。

なんだか知らんが、バックやヤマハのような超優等生トランペットにはない、危うさと、コントロールの幅の広さがある楽器です。自分で、音をイメージしてやってみると、10回に一回ぐらい本当にそうゆう音が出てくるので不思議です。幻聴かもしれませんが。


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コメント: 3
  • #1

    夜中麦酒之介 (月曜日, 15 1月 2018 05:42)

    赤のコミッティ、ST-3460ですね。いやぁ、珍しい!
    これは復刻コミッティでも最末期のモデルであのマイルスリスペクトで有名なウォレス・ルーニー監修のもと、わずかに製作されたスペシャルモデルです(STはSpecial Trumpetの略)

    仰る通り、これはマイルスが晩年ホルトンに特注させていたカスタムモデルをベースにウォーターキィのみヴィンテージのように横付けに変えて製作していました。とても良い楽器だったのですが、残念なことにホルトンの事業整理の一環でラインナップを絞ることになり、僅か数年しか作られずに消えていきました。

    私もコミッティが好きで今まで何本も吹いてきましたが、一度楽器店で吹いたST-3460が過去最高でした!結局一足早く他の人に売約されしまい、非常に悔しい思いをしました。望みは薄いですが、私にとってはいつの日か必ず手に入れたい楽器です。

  • #2

    mmk (日曜日, 11 9月 2022 20:35)

    そちらって金属はどんな材質ですか?

  • #3

    Black Devil (月曜日, 31 10月 2022 19:06)

    黒のST-3460を所有している者です。

    ベルやケーシング、リードパイプなどは一般的な真鍮製、一部のスライド管や枝管、マウスピースレシーバーはニッケル(洋白)です。チューニングスライドは真鍮とニッケルが互い違いになるように設計されています。

    ベルはシルキーと同じくシームレスベルで、チューブから押し出して成型するので継ぎ目はないようです。フレアの開きはオールドコミッティのように緩やかなタイプです。ボアはいわゆるヴィンテージコミッティがリードパイプ側とケーシング側の管で内径の違うデュアルボアを採用しているのに対し、ST-3460は通常の460インチMLボアとなっています。ケーシングは真鍮ワンピース(いずれも当時マーチンカスタムアトリエに勤めていた技術者からの情報)

    ケーシングや細かなパーツ類はホルトンMFホーンとして出されていたST-550と共通で、実際ST-550のパーツが流用された個体も僅かながらあったようです(中にはST-3460なのにST-550と刻印されたものまであったとのこと)そのタイプは通常のST-3460と異なりピストンスプリングが中バネからオールズのような外バネになっているのが特徴で、恐らくピストンごとST-550を流用したのでしょう。

    通常のT-3460,T-3465がレシーバー側にケーシングが寄っているのに対し、ST-3460はほぼ中央なこと、T-3460よりもリードパイプとケーシング側の枝管との間が広いなど、明らかにシルキーを参考にしているように思います。

    なお、私の所有しているST-3460は意外にも超ダークというほどでもなく、少々ヘンクツですが柔軟で現代的に使えるモダンな楽器だなぁ、という感じです。マイルスも現代的なフィーリングとサウンドを求めていたことが感じられますね。