I can't get startedはクリフォードブラウンなんかもやっているけれど、私が愛聴しているのは Doc Severinsen & The Tonight Show Bandの「Once more with feeling」というアルバムでに入っているバージョン。
このアルバムのこの曲の Doc Severinsenのトランペットの音がたまんないんだわ。煌びやかで、ツヤがあって、音がギューっと詰まっていて。ソロが良いんだ。これこそトランペット!っていうソロで。難しいことはしないし、テクニックをひけらかすわけでもない、シンプルなソロなんだけど、最後のハイノートまで一気に聞かせるソロなんだ。
普段私はDoc Severinsenとは対照的な、チェットベーカーなんかのダークで、ソフトで、静かなトランペッターが好きなんだけれど、I can't get startedだけはこのドクセバリンセンのトランペットで聴くのが一番好きだ。ゲストボーカルのトニーベネットの歌も素晴らしいし。
Doc Severinsenは長年、テレビ番組の Tonight Showのハウスバンド(ビッグバンド)のリーダー兼音楽監督をやっていた。ドクセバリンセンがリーダーをやっていた頃のTonight Showは、ジョニーカーソンっていう名司会者が30年間務めていた(見たことはないけれど)。アメリカってすごいよな、毎晩放映するテレビショーのハウスバンドにビッグバンド採用するんだから。しかも、すごいのはそのビッグバンドのメンバー。アメリカの大物スタジオミュージシャンやら名門ビッグバンドのOBなんかで構成されていた。Snooky YoungもChuck Findleyもいた。
その、Tonight Showのジョニーカーソンが引退しようかっていう頃に作られたのがこの「Once more with feeling」というアルバムのようだ。ほぼ全曲ジャズのスタンダードが演奏されている。そこに、ドクセバリンセンを始めとする名プレーヤーたちがソロを繰り広げる。アレンジもポップでありながら、エキサイティングで、豪華絢爛で聴いていてとても楽しいアルバムだ。これであれば、普段ジャズを聴かない人にもジャズのビッグバンドの興奮を味わってもらえると思う。それでいて、聴いていて飽きない。
Tonight Showでの演奏も YouTubeで見ることができるのだが、スタープレーヤーがゲストで参加したり、ハウスバンドのメンバーをフィーチャーしたりと、見てみると面白い。こんな贅沢な演奏を昔のへぼいテレビや、モーテルの小さなテレビで聞いていたりする人もいたんだろうから、やはりアメリカっていうのは豊かな国だよな。まあ、オイスターソースをジャバジャバ料理に使ったりする中国人も豊かだと思うけど。あれなんて、牡蠣たくさん使って作ってるんだろうからね。
Doc Severinsenの若い頃、まだ Tonight Showのバンドリーダーになる前の映像、YouTubeで見たことあるけれど、まあ、バカテクで音もすごい綺麗なんだけれど、じゃあレコード買って愛聴するかっていうと、そうでもないような気がした。けれど、 Tonight Showの映像でこの人を見ると、もう、トランペッターに成るんだったらこう成りたい!ってつい思っちゃうぐらいかっこいい。トランペッターとしてもバンドリーダーとしてもカッコイイ。
ジョニーカーソンが亡くなった時、追悼番組でこの人がバンドを指揮してフリューゲルホーン吹いてるんだけれど、すげー美しい。もう、テレビでこんな良いのやっちゃっていいのか、放送倫理上大丈夫なのか?って思うほど凄い、美しくて、切なくて、煌びやか。
もし、まだ聴いたことなければ、是非聴いてみてください。
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